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01:中医学の理論(陰陽五行説)

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古代から中国には「易」という哲学の思想があります。占いにも使うあの「易」です。
易学では、宇宙の万物は陰陽二種類の「気」に支配されていると考えます。例えば、

陽: 天、昼、白、男、熱、火、上、左、背、表、外
陰: 地、夜、黒、女、寒、水、下、右、腹、裏、内

もう一つ、古代から「五行」の学説があります。
宇宙の万物は土、金、水、木、火の五つの属性から説明できるという考え方です。

土はやがて固まり金(鉱物)となり(あるいは土中に金を産み)、金は溶けて水となり(あるいは冷えて水を呼び)、水は木を養い、木は燃えて火となり(あるいは擦り合わせて火を生じ)、火が燃え尽きて土になります。
これは五行の「相生」といいます。
また、土は木によって侵蝕され、金は火によって溶かされ、水は土によって止められ、木は金によって傷つけられ、火は水によって消されます。
これは五行の「相剋」といいます。
全ての物はお互いに関連し合って存在しているという宇宙観がここに込められているのです。

「陰陽五行学説」とは易学の陰陽と五行学説から合体して生まれたものです。
陰陽五行学説に従って全ての物は五つに分類され、宇宙のあらゆる現象を説明するのに使われています。
人体が小宇宙だというのを聞いたことがあるでしょう?
小宇宙ですから、人体も陰陽五行学説で説明ができます。
陰陽五行学説に従って人体の内臓を五つに分類し、相生、相剋の関係で病気を診断することは中医学の基礎理論です。
中医学の理論では、症ということもあり、診断法には脈診、望診及び問診がありますが、ここでは省略します。

中医学では、人体には五臓と六腑があります。
ここには、西洋医学での内臓の分類と違う意味が込められています。
例えば、「肝」といても、肝臓だけのことではないのです。その点だけは注意してください。

五臓とは、肝、心、脾、肺、腎です。

肝は血液の造り、血流量の調節、栄養の貯蔵などの機能があります。
眼、耳、乳房、生殖器は肝と密接な関係があります。

心は血液を循環させる動力であるとともに精神神経系の中心となります。

脾は胃、口に働きかけます。食物を消化し、「精」(栄養)に変える機能を持っています。

肺は呼吸作用によって吸収した「気」と脾の働きで得られた「精」を合体させてエネルギー源の「元気」を造ります。

腎は精を貯蔵し、体の各器官の要求に応じて、随時送り出す機能があります。
精力は全て腎に蓄積されていますから、生殖機能を司っているのも腎です。

六腑とは、胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦です。

胆は肝臓で造られた胆汁を貯蔵する器官です。肝臓と深い関係があります。

小腸は胃で消化された食物を精と残り糟に分けて、精を脾に、糟を大腸に送ります。

胃は飲食物を受け入れ、脾とともに消化して小腸に送ります。
「胃気壮ならば五臓六腑みな壮なり」と言われています。

大腸は小腸から送られた食物の糟を運び出します。
ここで、糟の水分を吸収して、膀胱に送ります。

膀胱は大腸から送られた水分を貯め、尿として排泄します。

三焦は臓器としては存在せず、食物の消化によってできた「気」、「血」、「精」を体内の水路を調節して全身に送るはたらきをしています。

陰陽五行学説で説明すると、五臓は陰に属し、五腑(三焦を除く)は陽に属します。
また、肝と胆は木、心と小腸は火、脾と胃は土、肺と大腸は金、腎と膀胱は水に属します。
それらの相生、相剋の関係は次のように表しています。

 

左の図を見て、二つの通路があると思ってください。
一つは外側の周りで前のものが次のものを補うように循環している通路で、もう一つは内側で一つおきに次のものを制すように循環している通路です。
健康な人の体内の各器官は陰陽、相生相克のバランスをよくとって生きています。

体内の陰陽、相生相克のバランスを崩れると、病気になります。
ふだん、外側の補う通路で循環していますが、体内の調節するため、たまに内側の制す通路を起動します。
しかし、内側の制す通路をしきりに起動すると、病気になりやすいのです。

例えば、栄養を取りすぎて、肝に余分な気が貯まってきます。
肝は心を補いますが、心はそんなに栄養が要らない時、肝は内側の通路を通じて、脾を制すはたらきを起動します。
すると、体は食欲がないのを感じて、減食になります。
この自然な調節機能が体内のバランスを守っているのです。

もし肝と心の通路が詰まって細くなったとすれば、心を補うのが不十分で、心は弱くなって、脾を補えません。
それに肝は栄養が貯まって、脾を制します。
ついに脾か胃は病気になります(脾か胃かどちらが病気になるのは中医学における症で診断します。
症の話しはもっと分かりにくいことで、その話しは省略しましよう。
ここで仮に脾は病気になりましたが、病気のもとは肝と心の通路です。
この場合では、中医学は脾を治す薬だけではなく、病気のもと、肝と心の通路を治す薬も出します。

同じな病気で、西洋医学はどうするかを見てみましょう。
まず、色々検査をして、情報を集めて、その情報(データ、写真など)を見て、病気になったことを判断していただきました。
そして、薬をいただいて、薬を飲んでいる間は病気がよくなるような気がしますが、薬を止めると、又、悪くなります。
なぜなら、上記の中医学の場合と比べれば分かるように病気のもとを治していないからです。

西洋医学では、いくら検査しても、その肝と心の通路の詰まりを見つけられません。
それは実在しませんからです
(最近、アメリカの大統領が人体の遺伝子が解明されたという発表しました。将来、中医学理論の中における通路が実在することは証明されるかもしれません)。

中医学は西洋医学との基本的な違いが病気のもとを見つけること、人体の働きのバランスの調整を目標として、病気のもとを治すことです。これも西洋医学で治せない病気を漢方薬に求める人が増える所以です。

理論的に中医学には診断が出来ない病気はありませんが、その理論が複雑なので、実際に医者の技術や経験などの個人差によって、間違った診断や、結論を出せないこともあります。
漢方薬を出しているから、きちんと中医学で診断しているかと言えば残念ながら、そうでない医師や病院も多いことが事実です。

五臓の相生相克の関係はもう述べました。これから、食べ物について話しましょう。

今まで、ずっと医学の話しをして、食べ物だって、医学となんの関係があるのと思う人がいるかもしれませんね。
中国では、昔から薬膳料理があります。
それは「医食同源」という思想から生まれました。
薬膳料理の種類にしても、治療を目的とした治療薬膳や、病気の予防と保健を 目的とした家庭薬膳があります。

「名医は未病を治す」という言葉があります。
未病とは、健康ではなく、病気になる一歩手前の半病人という状態です。
そのままほっておくと、必ず病気になってしまいます。
こういう状態の人には、体がさまざまな警戒信号を出しています。
それはつまり、体がもうこれ以上の無理はしないでくださいと悲鳴をあげている状態なのです。
この信号さえちゃんと読みとって、発信先の臓器をつきとめ、そこを丈夫にしてあげれば、病気にならずにすみます。
未病の段階で治療できるわけです。
これが本来の家庭薬膳の考え方なのです。

古書に「薬は病気を退けるもので、食べ物は病気をしたがえて治すものである」と記されています。
この観点から言えば、薬は特定の時期(病気の場合)での特別の食べ物だけです。
病気になった時、食べ物を選んで作った薬膳は特定の時期での特定の食べ物です。
下記の表現はもっと分かりやすいと思っています。

薬 + 食べ物 = 特別の食べ物 + 特定の食べ物

食べ物の味も五つに分類されて、五味と呼びます。五味とは、甘、辛、咸、酸、苦です。

甘は甘い味で、緩和と滋養強壮作用があり、脾、胃によいです。

辛は辛い味で、発散作用があり、肺、鼻、大腸によいです。

咸は塩辛い味で、和らげる作用があり、腎、膀胱、耳、骨によいです。

酸は酸っぱい味で、収斂(臓器を縮める)作用があり、肝、胆、眼によいです。

苦は苦い味で、消炎と堅固作用とがあり、心臓によいです。

それらの相生、相剋の関係は次のように表しています。
(前の図にある土、金、水、木、火を味の甘、辛、咸、酸、苦に取り替えます。)

 

右の図に示した相剋の関係から分かるように、酸は脾、胃を痛め、弱めます。

苦は肺、大腸を痛め、風邪を引きやすくなります。

甘は腎、膀胱を痛め、浮腫が起きます。

辛は肝、胆を痛め、塩害が起きます。

咸は心、小腸を痛め、血圧が上がります。

例えば、甘いものを食べ過ぎると腎の機能を傷めます。
辛いものを食べ過ぎると、肝を傷めます。
腎と肝は生殖機能と深く関係があるので、生殖機能にも弱くなります。
女性の生殖機能の強さは子供の性別に大きく影響を与えます。
強すぎと、男の子ばかりを産むことになり、弱すぎると、女の子ばかりを産むことになります。

人が生まれる前に、父母から半分ずつの遺伝子をいただく同時に、人体の特徴、性別、時にある病気も決められます。
人が生まれてから、人の成長や、病気などは食事の習慣に大きく左右されます。
簡単にいえば、人の体質は遺伝子+食べ物+環境次第ですね。

つまり、先天の気+後天の気+風水ということになるのです。