身近な仏教用語

08:馬鹿

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「馬鹿」という言葉の語源はよく分かっていません。
もちろん「馬鹿」は当て字なの ですが、「莫迦」という字だって正字かどうかはあてにならないのです。
一般には、 「バカ」はサンスクリット語モーハ(moha)の音訳で、「慕何」、「莫訶」、「莫迦」、「婆迦」と書 かれる、とされています。

モーハは「謨賀」と音訳された例がありますが、その他の場合はどうなのでしょう?
モーハの語根、“ムフ”(muh)は迷うという意味で、モーハは「迷妄」、「錯乱」というような意味です。
「癡」、「愚」、「愚癡」などと漢訳され、「無明(むみょ う)」と訳されることもあります。
その意味内容からすると、馬鹿の原語はモーハで あるとしてよさそうですが、確証はありません。

また、「バカ」の原語をサンスクリット語のマハッラカ(mahallaka)に求める説もあります。
その説によれば、マハッラカは無知という意味なのですが、実はマハッラ カにはあまりそのような悪い意味はありません。
マハッラカという語は、サンスクリット語といっても普通に用いられる言葉ではなく、「老年の」という意味の仏教梵語で、むしろ、尊敬の意味をこめて用いられていたようです。
「摩訶羅」と音写されましたが、「バカ」などという音写例は皆無です。
このような特殊なサンスクリット語を持ち出してきたのは、どのような理由によるものなのでしょうか?

『日本国語大辞典』などには、サンスクリット語bakaから出た、という説が挙げられています。
「バカ」(baka)とい うサンスクリット語はあることはあります。
しかし、バカというのはアオサギの一種で、学名はArdia niveaなのです。
この鳥はバカどころではなく、大変に用心深く、賢い鳥として知られ、ずるがしこい人、偽善者をこの鳥にたとえます。
「バカ鳥のようにふるまう」というと、偽善家、ニセ信者のことになります。
だから、この鳥にはずる賢いというイメージはあるのですが、馬鹿と いうイメージにはほど遠いのです。

ただ、萩原雲来『梵和大辞典』には、baka-murkha という語が載っていて、「あおさぎのような愚者」と訳されています。murkha(ムールカ)は愚かという意味であっ て、バカなアオサギを愚者にたとえているのです。
たまたま愚かなアオサギの話が語られて、ちょうどそのバカ鳥のように愚かな、というコンテクストなのでしょうかね?

さらに、仏典には、バカという名の有名な悪魔が2名ほど知られています。
また、 バカという名の聖者もいましたが、いずれも馬鹿とは無関係でありましょう。

そういうわけで、「馬鹿」の語源は結局は分からず仕舞いで、馬鹿みたいな話ですが、今のところはモーハ説がやや有力のような気配ですよ.。