アラカルト

13:ボケの治療と予防

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年をとると、物忘れが多くなるのは自然な老化現象であり、誰にでも起こることです。

 

しかし、そうした物忘れと「痴呆」はまったくの別物です。

痴呆とは、一旦獲得した知的・精神的能力が病的に低下した状態のことをいいます。

例えば、「夕飯のメニューが何だったか思い出せない」というのは単なる物忘れであり、痴呆の場合は、夕飯を食べた体験そのものを忘れてしまうというふうに、その症状には大きな違いがあるのです。

お婆様は、アルツハイマー性痴呆が発症していると推定されます。

痴呆の症状を引き起こす原因はさまざまですが、お年寄りに現れる痴呆の8割は、「脳血管性痴呆」と「アルツハイマー病」が占めています。

脳血管性痴呆とは、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害に引き続いて起こるものです。

脳出血や脳梗塞などによって脳の血流が妨げられると、脳の神経細胞に充分な酸素や栄養が送られなくなります。

その結果、脳神経細胞の働きが低下したり、一部が死滅することで痴呆の症状が起きるのです。

近年は、脳出血よりも、脳梗塞から痴呆に至るケースが増えています。
特に小梗塞が多発することで起きやすいといわれています。

アルツハイマー病と違って、比較的若い年代でも発症し、男性に多いのが特徴です。

症状の初期には、頭痛やめまい、手足のしびれ感などが出現します。
その後、脳梗塞の発作を繰り返すことで、段階的に痴呆の症状が進んでいきます。

脳血管性痴呆では、「脳梗塞」が再発しなければ、アルツハイマー病に比べて進行は緩やかです。

治療については、薬物療法として、脳血管障害の再発を防ぐために次のような薬が用いられます。

● 抗血小板薬 血液を凝固させる作用がある血小板の働きを抑えて、血液を固まりにくく
、          し、 血栓ができないようにする。
● 抗凝血薬   抗血小板薬と同様に、血液が固まるのを防ぎ、血栓ができないように
する。

アルツハイマー病とは、特殊なたんぱく質が脳に沈着することによって脳神経細胞が破壊されていき、その結果、脳が萎縮して痴呆の症状が現れるというものです。

若い世代に起こるものを「早発性(若年性)アルツハイマー病」、お年寄りに起こるものを「遅発性アルツハイマー病」と呼んでいます。

お年寄りに起こる遅発性アルツハイマー病ですが、現在、日本の患者数はおよそ百万人ほどとされており、これは65歳以上のお年寄りの約5%にあたります。

この病気を引き起こす要因は少しずつ解明されてきてはいるものの、現時点では予防法や、病気の完治につながる決定的な治療法は、まだ見出されていないのです。

症状として、アルツハイマー病でまず最初に起こるのは記憶障害です。

また、見当識(自分がおかれている状況や自分自身のことを正しくとらえる能力)の障害や判断力の障害も起こるようになります。

進行すると人格に変化が起きるなど、患者さんによってさまざまな随伴症状を生じるようになります。

治療法としては、薬物療法を行うことで、病気の進行をある程度遅らせることができます。

抗痴呆薬は「アセチルコリン」という脳内の神経伝達物質が減るのを防ぐため、記憶障害の改善に効果があります。

また、不眠や幻覚などのさまざまな随伴症状に対しては、向精神薬や抗うつ薬、睡眠導入薬などが用いられます。

こうした薬物療法とともに、なるべく今までと同じような生活リズムを保って、家事や仕事を行うことも症状の進行を遅らせます。

また、脳の機能低下を防ぐため、文章を書くなどのリハビリを継続的に行います。

痴呆の予防なのですが、高血圧を患っている人が、脳血管障害となり、脳血管性痴呆を発症するというケースは少なくありません。

つまり、高血圧は痴呆の引き金になりうるということで、高血圧症の人は、きちんと治療を続けることが大切です。

また、高血圧や糖尿病、動脈硬化があると、アルツハイマー病の危険度が高まることも分かっています。

高血圧や生活習慣病の高脂血症は脳血管性痴呆の危険因子であり、そして高血圧や高脂血症は、食生活と深く関係しています。

脳血管性痴呆を予防するためにまた、治療のためには、次のような食生活を心がけてください。

★ 主食(ご飯)をきちんと摂る。

★ 朝食は抜かない。夜食は避ける。(夕飯のことではない)
朝、脳にブドウ糖を供給することが必要です。

★ 油や塩分は控えめに。野菜や豆、海藻をまんべんなく摂る。
特に、納豆、湯葉、高野豆腐などのサポニン、フラボノイドを多く摂ってください。

★ 肉に偏らず、むしろ魚志向で。
特に、青魚のDHAを、多く摂ることです。

★ 水分を十分摂る。(一日1~2リットルくらい)
脂や血の濁りを洗い流し、水を循環させることが必要です。