アラカルト

14:薬湯の勧め

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日本に古来より伝わる薬湯(くすりゆ)は、季節の移ろいを感じる行事であるほか、入浴の効果を高める働きをもっているということがわかってきました。
身近な植物を使ったお風呂で、四季を味わい、心も身体もリフレッシュしてみませんか?

薬湯とは、薬用の植物を煮出すなどしたエキスを湯に加えたお風呂のことです。
もとは傷や病などを癒すために医療用として使われていました。
現代では季節の風物詩としての意味合いが強く、実際の効果は香りや見た目など気分の問題と片付けられがちですが、伝統的な薬湯には血行促進、保温、発汗量などの効果がみられます。

例えばユズ湯に入ると血管が広がったときに分泌されるノルアドレナリンが普通のさら湯よりもかなり増えると言います。
血液の循環が良くなることからユズ湯は腰痛や冷え性などに悩む人に向いているといえます。

発汗量が圧倒的に多くなるのが大根の葉湯です。
さら湯では入浴後十分ほどで汗が引いてきますが三十分たっても発汗が続くといいます。
汗をかけば新陳代謝がよくなり、老廃物が身体の外に出やすくなるという利点があります。

皮膚温の変化を調べてみると保温効果が高いのがユズ湯とショウブの根を使った根ショウブ湯です。
端午の節句のショウブ湯では一般的に葉を使いますが、実は根のほうが血行促進などの薬効が大きいのです。

夏の土用に入る桃の葉湯は、昔からあせもや虫刺されなど肌のトラブルを防ぐといわれてきました。
日焼けした肌の赤みの変化をさら湯と比べてみると桃の葉湯のほうが赤みを抑える働きがあったといいます。タンニンなど消炎や解熱に有効な成分が含まれるからではないかといわれています。

薬湯には「抗酸化力」があります。
温泉や水道水、薬湯などを対象に調べたところ、水道水が酸化力を持つ一方で、温泉や薬湯は還元力(抗酸化力)をもつことが分かったといいます。

水道水が酸化力を持つのは塩素を含んでいるためです。
ヒトの皮膚は年齢を重ねるにつれ酸化して衰えるため、抗酸化力の面からみると温泉と薬湯は肌の老化を遅らせるのに同様の効果があるようです。

いろいろな効果が期待できる薬湯ですが、ヨモギ、ドクダミ、アロエ、ショウガなどは刺激が強いため肌の弱い人は注意が必要です。
また、どの植物も人によってはアレルギーを起こす可能性があります。体質に合ったものを選んで上手に活用してください。

時期      材料        作り方と効果
1月       松        生の葉をよく洗い、鍋で15分ほど煮出す。
血行促進・リラックス
2月       大根       陰干しした葉を刻み、水から沸かす。
発汗作用・血行促進
3月       ヨモギ       刻んだ生の葉を煮出し、濾して湯に加える。
血行促進・抗菌
4月       桜        日干しした樹皮を煮出す。花を浮かべてもよい。
消炎作用・打ち身等
5月      ショウブ      干した根を細かくして煮出す。葉で香りを楽しめる。
血行促進・保温
6月      ドクダミ      生の葉・茎を刻み沸かす。干した葉はにおいが弱まる。
強い抗菌作用
7月      桃の葉      30枚ほどの生の葉を煮出す。
消炎作用・あせも等
8月       ハッカ      陰干しの葉に熱湯をかけて蒸らす。ミントでも代用できる
血行促進・発汗抑制
9月      菊(野菊)     生の葉や陰干しの葉を熱湯で蒸らす。花も利用する
血行促進・保温
10月      ショウガ      すりおろした絞り汁やスライスを使う
抗菌作用・血行促進
11月      ミカン       陰干しした20個分の皮を湯に浸す。さわやかな香り
保温・ビタミンCが美肌に
12月       ユズ       半分に切って湯に浮かべたり、果汁を絞ったりする
血行促進・保温
通年      アロエ      棘を除き、すりおろした生の葉をガーゼで絞る
抗菌・消炎・保温