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19:食物の五行五性について(薬膳・食養生の秘訣3)

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食物や薬草の特性は、「陰陽五行説」に基づいた「五味」と「五性」が大切な要素です。「五味」とは、五行の気「木 火 土 金 水」を、食物の味に対応して、「酸 苦 甘 辛 鹹」の五つに分類したものです。それぞれ、五臓「肝 心 脾 肺 腎」と、五腑「胆 小腸 胃 大腸 膀胱」に深く関係しているものです。

酸味の作用は、筋肉などを引き締める収斂作用があり、下痢や寝汗にも効果的です。味の作用は、消炎作用やかためる作用があり、出血や下痢に効果的です。甘味の作用は、緩和と滋養・強壮の働きがあり、鎮痛にも効果的です。
辛味(トウガラシの味)の作用は、暖め、発散される働きがあり、風邪などに良く、発汗を促します。鹹味(塩味)の作用は、軟化作用を促す働きがあり、お通じを良くします。

「五性」とは、食物を違う視点の性質、「寒 涼 平 温 熱」に分類したものです。もっと大きく三分割すると

身体を冷やし、鎮静、消炎作用のある「寒涼性」
身体を暖め、興奮作用をもたらす「温熱性」
その中間となる「平性」に分けられます。

普段の食事は、色々な食材を組み合わせながら、トータルして「平性」になるよう、バランスを取る事が大切なのです。自分は冷え性だからといって、夏にも体を温める物ばかりを摂ると、却ってバランスが崩れて弊害が出ます。

冷え性の人は、普段はなるべく体を冷やす食物を控えるなど、体質に合わない性質の食べ物は少量にする事が大切です。

こうした、寒熱分類は、中医学・漢方独特の物で、食物や薬草を体内に取り入れた時、それを「熱」の概念でとらえる考え方です。

生物学的にも、例えば、生姜(しょうが)を食べるとその辛味成分によって血管が拡張し、体温が上がってきます。冷えを伴う症状のある人や、温熱作用の低下した人の場合、生姜は大いに効果的な食べ物となります。

しかし、炎症などの熱があれば、却って逆効果になります。熱のある時は、寒性の薬草や食物を摂取する事で、その熱を下げる事が必要になります。

また、同じ特性のものでも、熱くして摂取するのと、冷たくして摂取するのとでは、寒熱比が異なります。食物や薬草の寒熱比を縮めたり、離したりするために、加熱時間を変えたり、寒熱比の違うものを配合することもあります。

「中医八網」では、陰陽、虚実、表裏、寒熱に八分類して、病床と薬物を対比させ、治療方針を決定するのですが、古来から八卦64に細分類されています。これは、占いの八卦と同じ考え方なのです。

五行の分類も、テレビや雑誌、健康本などに色々と載ってますが、中には根拠のないものが多く見受けられます。

肝臓に作用するという理由で、薬理効果を無視して「酸味・木気」に分類したり、苦くもないのに心(心臓)の病態に使うと言うことで「苦味・火気」に分類したり、逆に苦いから、心(心臓)の病態に効くはずだと思い込んで分類している物もあります。

下の表は、食物・生薬の五行と五性を分類したものです。食養生をなさる方には、是非とも活用して貰いたいものです。

 

食物・生薬の五行五性分類表
温              微温  平             微寒 寒      
米酢、梅肉、酢
リンゴ、スモモ、、杏
梅、カリン、
ヨーグルト
サンシュユ
柚、橙、カボス
スダチ、レモン
五味子、木瓜 烏梅、酸棗仁
よもぎ、蕗、、タラの芽 うど、菊花、春菊、ぎんなん 茶、コーヒー、苦瓜
竹の子、ゴボウ、
ビール、ほうれんそう、
麻黄、蒼朮、白朮、
檳椰子、厚朴、防己、
艾葉
柴胡、独活、連翹、
桃仁、芍薬、午黄
黄連、黄柏、梔子、
枳実、大黄、苦参、
地骨皮、オウゴン、
芒硝、熊胆、紫根
うどん、ウナギ、鯛、
牡蠣、鯵、エビ、
カボチャ、山芋
鶏肉、かまぼこ
にんじん
ごま、大豆、米、蓮根、
鶏卵、水飴、トウモロコシ、
小豆、はちみつ、葡萄
牛乳、小麦、栗、
豚肉
砂糖、茄子、胡瓜、
キャベツ、トマト、白菜、
レタス、柿、桃、みかん
梨、豆腐、こんにゃく
当帰、山薬、杏仁、
忍冬、反鼻
黄耆、ニクジュウ 大棗、サンザシ、飴、甘草、
百合、葛根、茯苓、麦門冬
人参、ヨクイニン、
香附子
沢潟、地黄、滑石、
瓜子、桑白皮、茅根
紫蘇、わさび、にら、大根、
呼称、山椒、生姜、
唐辛子、酒
さといも、葱 ずいき
桂皮、橘皮、乾姜、辛夷、
防風、薄荷、丁香、麝香、
木香、十薬、附子、細辛、
薤白、桔梗、陳皮
杜仲、木通、半夏、天麻、
茴香
蟾酥、金銀花、
牡丹皮、石膏
めざし、干物、佃煮、
大麦、栗、鰯、鯖、
味噌、納豆
しじみ、ひじき、わかめ
醤油
青のり、食塩、カニ、
昆布、あさり、もずく、
大麦、旋覆花 セイソウ 牡蛎、水蛭、鼈甲 シャチュウ