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46:冷房病と汗腺衰退症、その対策

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暑い日が続きますねえ。
今や、高温多湿な日本の気候には、夏に冷房のない環境なんて、普通、考えられなくなってきました。
しかし、現代、この冷房が、深刻な健康障害を引き起こしています。

それがいわゆる『冷房(クーラー)病』と呼ばれる自律神経の病気です。
もう現代病とも言えないほどメジャーになりましたね。

これは、体温を調整する自律神経が気温の変化に対応しきれずに負担を感じ、
頭痛や冷え性、だるさなどの症状になって表れる自律神経失調症です。

人の身体は、暑い時は体内の温度が外気に合わせてどんどん上がらない様に、
血管を拡張し、毛穴を開いて汗を分泌し、熱を発散して体温調節をします。
しかも汗は体温調整をするだけでなく、体内の老廃物を体外に出す大切な役割を持っています。

しかし冷房で身体を冷やすと汗腺は閉じてしまい、血管は収縮して血流障害を起こし、
老廃物が排出されずに体毒となり、
下痢腹痛などの内臓機能不全・手足の冷え・しびれ・むくみ・肩こり・頭痛などの初期症状が表れます。

さらに身体を冷やすと、身体は自然に夏モードになって毛穴を開き汗を放散しようとするのに、
冷たい冷房に当たる事により冬の状態に引戻され、
恒常性を保とうとしていた自律神経が混乱してバランスを崩してしまいます。

その上、暑い外気と冷たい冷房空間の激しい温度差への出入りが、一層、自律神経の混乱を増幅します。

この自律神経の失調症が、「冷房病」の正体なのです。

ただでさえストレスなどで自律神経系のバランスが崩れやすい現代生活なのに、
さらに冷房によって自律神経の働きが乱れると、全身多岐にわたる症状が出始め、
放置しておくと、夏場だけでなく、どんどん症状が重くなる病気が「冷房病」なのです。

女性の身体は冷えやすいので、特に注意してくださいね。
冷房病の症状は、女性に顕著に見られます。

これは男性に比べ、女性の体温がやや低い傾向にある上に、ホルモンの関係で、
月経周期に応じて体温変化がある事や、体内の熱を生産する筋肉組織が男性より少なこと、
さらにスカートやノースリーブなど女性の冷え易い服装などの要因によると考えられます。

特に、小さなお子さまは、クーラーに当てすぎてはなりません!

子供は新陳代謝が活発で、暑い時には盛んに汗をかきます。
冷房の中ではその発汗が鈍化してしまう為、活発な新陳代謝、
すなわち生長運動に悪影響を及ぼしてしまいます。

特に乳児の場合には、2~3歳までの時期は重要で、能動汗腺の数が決定されて、
体温の調節機能が確立されるのです。
乳幼児の肌の表面には、約230万個のエクリン腺(汗腺のひとつ)が有りますが、
機能するエクリン腺(能動汗腺)の数は 生後2~3年間に育った環境により決定されてしまうのです。

冷暖房の効いた環境、すなわち、体の温度調節の必要性が少ない環境で育つと、
能動汗腺が少ない身体になってしまいますよ。
これが、「能動汗腺衰退症」という病気です。

現代人、特に急激に冷暖房機の普及が始まった1970年代以降に生まれた世代に多いのが、
「能動汗腺衰退症」で、体温調節機能が低下し、暑くても「汗をかかない」のではなく
「汗がかけない」体に成長してしまう為に、常に冷房の効いた環境を求める悪循環に陥ってしまうのです。

「年寄りの冷や水」といいますが、お年寄りは、身体を冷やすと危険です。

高齢者は温度変化に対応する能力が低下している為、クーラーの冷気を受けて体調を崩しやすくなります。
さらに急激な温度変化によって身体の血管が急激に収縮すると、生命の危険を伴う事もあります。

会社勤めなんかで、常時、冷房された環境に居る方は、特に「冷房病」にはご注意くださいね。

空調の関係で、冷たい風に当たりっぱなしだと、身体が冷え切ってしまい、
夏から身体が逆行して自律神経が異常をきたしたり、「汗腺衰退症」になってしまいますよ。

また、冷暖房時には、天井と床に10度近い「温度ムラ」ができます。

どんなに厚着をしても、設定温度を上げても、風を防いでも冷える原因が足元にあれば、
冷えは解決しませんね。

具体的な対策は、以下の通りです。
どうか、ご自衛、ご自愛のほどを。

○外気温と室温の差を5度以内にする。
○ファンや風よけなどを用いて、冷たい風にずっと身体を当てない。
○クーラーのあるところに入れば、1枚羽織る、または掛ける。
○足元や腰の冷えには、厚手の靴下をはいたり、ひざ掛けをかける。
○せめて温かい飲み物を飲むようにする(ショウガ湯、焙じ茶なんかが良いですよ。)
○シャワーだけでなく、夜はせめて半身浴で汗をかき、身体を内側から温める、汗腺を開ける。
○寝るときは、タイマーをかけ、クーラーをつけっぱなしにしない。